食は私達の心の基本です。薬食同源(やくしょくどうげん)と言って、薬と食べ物は本来同じものであるという考え方があります。一つ一つの食物の味や形が違うように、それぞれ独自の働きを持ち、これらを口にしたときに体に及ぼす作用も異なります。どこにでもある身近な食材そのものが薬となり、私達の体の血や肉や骨となっていくのです。
食物の持つ五性(寒・涼・平・温・熱)と五味(酸・苦・甘・辛・鹹)の特徴を最大限に生かし、症状を改善していきましょう。
たかが冷え・・と見過ごされがちですが、消化不良や不眠、肌荒れ、月経異常、ひいては脳卒中やがんの一因にもなる万病のもと。
原因 | 血と水の流れが滞り、冷えを生む |
対処法 |
健康のために、一年中サラダは勘違い!! 冷え性で悩んでる人は、体を冷やす食べ物を避けるのが大前提。現在では冬場も夏野菜が店頭に並んでいますが、これらは水分が多く、体を冷やす食材の典型と言えます。冬に夏野菜を使ったサラダなどを口にすれば、冷えるのも当然です。反対に、体を温める温性の食材を積極的にとれば、次第に冷えが改善し体ポカポカ体質に替わります。 |
全身に酸素や栄養を運ぶ血液が不足すると、各器官の働きが低下したり、美容にも影響を与えるため、放ってはおけません。
原因 | 血液を作り出す力が弱く、血液が全身に行き渡らない状態 |
対処法 |
貧血改善のために、補血作用や造血作用のある食物を積極的に補いましょう。 動物の肝臓であるレバーは血液を貯蔵する肝の働きを補う最適の食材です。 |
お通じ間隔が3日以上、いつも残便感がある、量が少ないなどの不快感があれば、それは便秘。原因を明らかにし、適切な対処を!
便秘のタイプは5つもある。
原因 | 胃腸に生じた熱で乾燥し、潤いを失い出にくくなる。暴飲暴食や熱性の疾患、高体温体質などが原因。 |
対処法 | アスパラガス、おくら、ごぼう、冬瓜、ほうれん草、白きくらげなどの胃腸の熱を冷まして潤す食材を。 |
原因 | ストレスによる緊張や座りっぱなしの生活、トイレを我慢する習慣などで気の流れが停滞、胃腸の働きが悪化して起こる。 |
対処法 | たまねぎ、ピーマン、きんかん、ゆずなどの気の流れをよくするものを。 |
原因 | 冷たいもののとりすぎ、血行不良、虚弱体質、過労などから下腹部が冷え、胃腸の働きが低下し生じる。 |
対処法 | にら、ねぎ、らっきょう、ごま、くるみなど、胃腸を温める食べ物を。 |
原因 | 虚弱体質や疲労、慢性疾患などで気が不足し、胃腸の働きが低下し起こる。 |
対処法 | もち米、さつまいも、じゃがいも、ぎんなん、あさつき、さやえんどう、かぼちゃなどで気の不足を補いましょう。 |
原因 | 病中病後、老化、産後、慢性疾患などで血=栄養が不足して胃腸の働きが弱まり、便を押し出す力が衰えることが要因。 |
対処法 | 黒ごま、黒きくらげ、しめじ、にんじん、ほうれん草、桃などで足りない血を補いましょう。 |
つねに不安感がある、イライラする、やる気が出ない…これは気の不足やうっ積が一因。早めに心の安定を取り戻しましょう。
原因 | 百病は気より生まれるとされ、精神疾患では「憂」や「思」の感情は肺を傷つけ、より思い悩む要素が強くなると「脾」が傷つくとされています。 |
対処法 | 気を補う食材、気のめぐりをよくする辛味の食材や柑橘類、さらに気を下げる働きのある食材など、症状に合わせて選択しましょう。また、「憂」や「思」の感情で傷ついた肺と脾には甘味と辛味の食材が必要です。 |
肥満にも「気」や「血」 「水」が関係するものなど、さまざま。自分の肥満タイプを知ることがダイエット成功への近道です。
肥満の原因は主に4つのタイプがあります。
原因 | 食べ過ぎにより、食べ物のカスが胃腸内に滞ることで、代謝が低下してしまっているタイプ。 |
対処法 | 低カロリーで食物繊維が多いものと酸味を合わせて摂りましょう。海藻類が有効。また梅干しや柑橘類などの酸味食材は、食べたものを分解し、エネルギーに変える働きを促します。 |
原因 | 水分代謝が悪く、余分な水分がたまっているタイプ。 |
対処法 | 豆類や海藻類など、尿の出を促し、むくみをとる食材がおすすめです。 |
原因 | ストレスにより気のめぐりが悪くなっている。過食、甘いものの過剰摂取に走りやすくなります。 |
対処法 | 気のめぐりをよくする、きんかん、ゆず、すだちなどの柑橘類や、たまねぎ、しそ、ピーマンなどを。 |
原因 | ④血流が衰え、新陳代謝が悪くなって起こる瘀血(おけつ)タイプ。 |
対処法 | 瘀血を取り除く、菜の花、ニラ、パセリ、ふきなどをとりましょう。 |
老化は腎機能の衰えにより、腎に蓄えられた「精」が不足して起こります。腎を助け、精を補う食材で、若さを保ちましょう!
原因 | 先天の精をどのくらい受け継いでいるか、また普段の生活習慣で、後天の精を増やせているか、無駄使いしていないかで、老化の速度は異なります。食生活の乱れや睡眠不足、過労、ストレスなどで精は消費されます。 |
対処法 | 腎の働きを強化し、腎精を補うことで、老化のスピードを遅らせることは可能です。老化防止は1日で達成できるものではありません。毎日少しずつでも習慣的に精を補っていくことが大切です。 |
東洋医学では、アレルギー症状を引き起こす大もとの臓器は、「肺」。花粉症、鼻炎、アトピー性皮膚炎など原因がはっきりせず、治療が難しい疾患です。
原因 |
肺は皮膚粘膜や鼻の機能を正常に保つ臓器とされています。鼻は肺の症状を表す窓口。肺に炎症が生じると、鼻づまりや鼻水、くしゃみなど鼻炎の症状が現れるのです。さらに肺と大腸は表裏一体で働くため、肺の機能が低下すると大腸の機能も落ち、腸内環境が悪くなると、全身の免疫力にも影響を与えることになります。 そんな免疫力の衰えや気の滞りなども、アレルギー疾患の一因となります。 |
対処法 | 肺や大腸を補う辛味の食材、さといも、大根、しょうが、ねぎなどがおすすめです。ただし、空気の乾燥する秋は、肺や大腸を潤す食材、栗、くるみ、ぎんなん、梨などはこうした薬効を備えています。 |
※これらの記事は、東京薬膳研究所代表 武鈴子先生の「はじめての和食薬膳」「和の薬膳」の書をもとに書いています。